2024年5月から6月にかけて、バンコク国立博物館は多くの入場者で賑わっていました。それも、普段は比較的空いている南側の展示室です。
そう、話題の中心は、ニューヨーク・メトロポリタン美術館から返却されたばかりという「Golden Boy」と呼ばれる像。
Golden Boyの由来を辿りつつ、数年前にアメリカから返却された貴重な品を紹介します。
これがGolden Boy
バンコク国立博物館ロッブリー美術の部屋に展示されているGolden Boyがこちら!
他の貴重な仏像などがそのまま展示されている中、完全防備での展示となりました。写真を撮る方が多いのか、列を作るためのレーンも準備されています。
真横から見た姿も美しいです。神のような天使のような。
この日はお坊さんたちもGolden Boyを一目見ようと観覧に来ていました。
Golden Boyとは?
シヴァ神を模っているとも、アンコール王ジャヤバルマン6世を模っているとも考えられています。最盛期の王だったジャヤバルマン7世と比べると聞いたことがない王ですね。
ちょっと調べてみたところ、なるほど。
ジャヤバルマン6世はタイ東北部に強い基盤を持っていたと考えられ、アンコール周辺ではこれといった建造物はありませんが、ナコンラーチャシーマ県のピマーイを建造したとされる王です。
1090年から1107年まで王を務め、その後、兄が王位を継いでいます。その兄は、後に壮大なアンコールワットを建造することになるスーリヤバルマン2世に王位を簒奪されることになります。
確かスーリヤバルマン2世が副王だった時代にピマーイを建造していたとされていたので、その時の王がジャヤバルマン6世だったということですね。
そして、この像は隣県のブリーラムで発見されています。なるほど。
返却までの経緯
この像がニューヨークのメトロポリタン美術館に収蔵されることになった細かい経緯はわかりませんが、その過程に、有名なクメール古美術商Douglas Latchfordの関連が確認されたとのこと。どうも、多くの重要美術品を正規のルートではなく略奪のような形で流通させていたようです。
略奪品ということが確認された以上返却しないといけませんね。こうして、2023年にタイにはGolden Boyを含む2点、カンボジアには14点返却することに合意したというわけです。
一緒に返却された「ひざまずく女性像」もすぐ近くに展示されていますので、お見逃しなく!
2021年に返却されたまぐさ石
こういった美術品の返却というのはたまにあるようで、タイで最も有名なのはパノムルン遺跡のまぐさ石(楣石)のお話しです。
遺跡修復中に盗まれたまぐさ石がシカゴの博物館で発見され、タイを代表するロックバンド・カラバオを中心に返還運動が行われ大騒ぎになりました。結局1988年にタイに返還されたとのこと。
下の写真は、カンボジア国境近くのサドックコックトム遺跡付属の博物館に展示されていたまぐさ石です。なんでも、2021年にアメリカから返還されたばかりの貴重な品だったようです。
ただ、この遺跡から発見されたものではなく、同じサケーオ県にある別の遺跡とのことでした。学芸員の方にその遺跡訪問を勧められましたが、逆方向に1時間ほどかかるとのことで断念。
すぐ横には、アメリカ政府からの証明書が展示されていました。
シルク王が仏像を寄贈!?
これに近いお話を少し。
2023年10月にペッチャブーン県のシーテープ遺跡がタイで4番目の世界文化遺産に認定されて大ブームとなりました。
バンコク国立博物館でも特別展シーテープが開催され、シーテープ遺跡の説明や出土品が展示されていました。
その中で、気になった仏頭がありました。
発見されたのは、世界遺産シーテープの構成遺産であるカオ・タモーラット山頂付近にある洞窟です。壁に仏像が刻まれているような貴重な洞窟です。
しかし見事な三角形の山ですよね。まさに聖山です。昔の人たちは、この山を目指してシーテープへ向かったことでしょう。
そして、博物館に展示されていた仏頭がこちら。説明文には、、、「ジム・トンプソン氏による寄贈」と記載されていました。
タイのシルク王ジム・トンプソンその人です。確かに彼は古美術収集家としても知られていたので、こういった貴重な品を集めていたんですね。
現在はバンコク国立博物館の収蔵品となっていましたが、普段から展示されているのかはちょっと分かりません。
まとめ
シーテープ遺跡の世界遺産登録や、Golden Boyの返却に伴う大ブームを見ていると(両方とも現地に足を運んで大ブームに乗せられた僕ですが)、タイ人にも歴史好きがたくさんいるんだなと改めて知ることができました。
シーテープやサドックコックトムは遠いけど、バンコク国立博物館はすぐそこなので、ちょっと時間を作ってGolden Boyに会いに行ってみてください。